胆道がんは、「胆のうがん」「胆管がん」の2つにわけられます。胆道がんは、膵臓がんと並んで治りにくいがんです。
胆道というのは、肝臓と十二指腸のあいだにある管と袋です。肝臓で作れられた胆汁という消化液は、十二指腸で分泌されますが、この胆汁が通る道が「胆管」で、胆汁を蓄えておく袋が「胆のう」です。「胆のうがん」と「胆管がん」の2つを総称して「胆道がん」といいます。
年齢別にみた胆道がんの罹患率は、50歳以上から増加し始めます。「胆のうがん」は女性に多いのが特徴です。女性は、男性の約1・5?2倍多く発症します。「胆管がん」は男性に多く、男性は女性の約1・7倍多く発症します。
1年に新たに罹患する人が1万8000人で、死亡者が1万7000人という数字からわかるように、胆のうがんは症状に乏しく、死亡率が高いがんとなっています。胆道がんはすい臓がんと並んで治りにくいがんです。
胆道がんは自覚症状がほとんどないため、早期発見が非常に難しいがんです。そのため、ある程度進行して黄疸の症状が出た時に発見されるケースがほとんどです。発見された時点で、すでに肝臓や肺などに遠隔転移しているケースが半数にものぼります。なぜなら、胆のうは粘膜層が薄いため、初期の段階から周囲の肝臓・リンパ節にまで転移しやすいという特徴があるからです。
40歳を過ぎたら、年に1回は人間ドックなどの定期検診を受けることが理想です。通常、胆のうの超音波検査が行われますので、無症状の胆のうがんが発見されることがあります。
胆のうがん・胆管がんいずれの場合もステージ1までは5年生存率は90%以上で、ステージ2以降になると残念ながら半分以下ですが、日本の胆道がんの治療技術は世界でもトップクラスを誇っています。
胆道がんになると、「なにが原因でがんになったのだろう?」と多くの方が自分の人生を深く見つめ直すきっかけになります。
しかし、なぜ胆道がんになったのかは、実はだれにも分かりません。危険な因子がなくてもがんになりますし、どんなに危険な因子が多くあっても、がんにならない人もたくさんいるのも事実です。
ここで大切なのは、危険因子がもしあれば、生活からそれをとりのぞくことです。「生活を変える」「意識を変える」「自分を変える」。自分が変われば胆道がんが再発しにくい、あるいは転移しにくい体内環境をつくることにつながります。
ではここで危険因子をご紹介しましょう。
1.胆石
食事の欧米化で、日本人の10人に1人は胆石をもっているともいわれています。胆のうがんにかかった患者さんの約60パーセントに胆石(結石ともいいます)があります。胆石がない人と比べると10倍のリスクがあると報告されています。
2.肥満と高カロリー摂取
胆汁内のコレステロールが結晶化し「コレステロール系胆石」となります。
3.野菜・果物をあまりとらない食生活
4.不安やストレス
ストレスは免疫力を低下させることがわかっています。ストレスを溜め込まず、だれかに「話す」(=放す)ことで、執着から解放されて自分から手放すことができます。わたしはいつでもあなたのお話を聞く準備はできています。
「胆のうがん」の場合
・腹痛
・みぞおちの痛み(胆道がんの約60%の人が胆石を合併しているため)
・食欲不振
・体重減少
・発熱
「胆管がん」の場合
・黄疸
・尿が茶色ににごる
・便が白くなる
・全身にかゆみがでる
ステップ1 問診
問診では、ていねいにお話をうかがっていきます。次のような質問がありますので、受診前にまとめておくとよいでしょう。問診のあと、いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
・他の病院を受診したか、治療を受けてきたか、先生の診断は?
・今までに入院するような病気になったか、手術を受けたことがあるか、内服している薬はあるか?
・便の色、尿の色は?
・アレルギー体質かどうか?
・血縁関係の人にがん体験者やその他のがんの治療経験があるか?
ステップ2 検査と診断
主な検査は、血液検査と超音波検査の2つです。黄疸があるときは胆管が詰まっているので、血液検査によって肝機能検査を行います。腹部超音波検査では、できたがんを映し出し、胆管の閉塞具合なども調べることができます。超音波検査で疑わしい病変が見つかった場合には、CT検査・MRI検査といった精密検査を行います。
精密検査の結果が出ると、「胆管がん」「胆のうがん」にそれぞれ診断されます。
がんは進行速度の把握が治療に非常に重要です。さらに精密な診断材料として超音波内視鏡検査によって直接胆道造影を行います。精密な情報を得ることで、患者にとってより良い治療を行うことができるようになります。
ステップ3 ステージの確定と治療方針の決定
胆道がんの病期は、1期、2期、3期、4期に分類されています。主な治療法として、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つあり、これらを組み合わせ、どのように治療するのかは、患者さんの状態や、がんの進行度などによって決められます。
医師は患者さんとよく話しあいながら、今後どの治療法がもっとも適切かを提案し決定していく、というのが一般的な流れです。
たくさん行われる検査に、不安を感じられる方も多いことでしょう。もし、不安があれば、遠慮せず、担当医師に次のように医師に質問してみましょう。
「いま、なにを調べるための検査なのですか?」
「その検査は、本当にやる必要はあるのですか?」
「自分はいまどのステージですか?」
「今後、どのような治療をしていくのがベストですか?」
「QOL(生活の質)をなるべく落とさない治療法はどれですか?」
ご自分から、積極的に質問していきましょう。このような会話を交わすことで、おたがいに“信頼関係”を築くことができます。「安心して治療に向きあえる」という土台づくりこそが、胆道がんに負けないファーストステップです。
胆道がんの治療は主に、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つです。
胆道がんの治療は、手術が基本です。1期の早期がんであれば、がん部分を摘出するだけでほぼ根治を得ることができます。黄疸が進行すると肝機能に障害を受けるため、黄疸の症状が出ている場合には、先に黄疸の治療(ドレナージ)を行います。
胆のうの壁を越えて、隣接する肝臓や胆管、十二指腸、大腸などの臓器に浸潤すると、複数の臓器の切除が必要となり、再発のリスクも高くなります。手術の難易度も高く、手術による死亡率は数%から10%で他のがんの手術に比べると、比較的高い死亡率となっています。
手術ができた場合でも、ステージ2以上の場合の5年生存率は約40パーセント。手術ができない場合の1年生存率は約20パーセントとかなり厳しい状況です。
⚫️メリット
がん細胞を取り除くことによって、再発や転移を防ぐ効果が期待できます。
「抗がん剤は毒だ。医者の金儲けのために患者は利用されている」といった話がまことしやかに語られています。抗がん剤を使用中は、一時的に免疫力は落ちますが、治療後は体力は徐々に回復するので、けっしておそれるものではありません。
治療の目的は、術前化学療法、術後化学療法、遠隔転移に転移があるとき、または転移がなくても再発する可能性が高いとき、再発してしまったときの治療法としておこないます。また、手術ができるがんに対して薬物療法を行い、できるだけ小さくしてから手術にのぞむ場合もあります。
⚫️メリット
・転移があっても、がん細胞の増殖を抑えて攻撃できる。
・入院せず外来での治療もできる。
⚫️副作用
薬の種類によって重篤な下痢をおこすものやアレルギーがある人には向かない薬もあります。薬物療法は、正常な細胞も攻撃することになるので、薬物有害反応(いわゆる副作用)が生じることがあります。
血液細胞が減ったり、口の中や胃腸の粘膜の再生が起こりにくくなったり、髪の毛や爪が伸びなくなったり、風邪をひきやすくなったり、貧血、吐き気、口内炎、脱毛など。女性ならば、将来的に妊娠・出産を希望するときは、まえもって担当医に相談しておくことが大切です。
しかし、近年では副作用に対する治療(支持療法ともいわれています)が、かなり進歩してきています。担当医に「副作用の症状を軽減させるための治療はありますか?」と相談してみましょう。注射(点滴)薬と内服(経口)薬があります。
胆道がんに対する放射線療法は、一般的にはあまり効果が期待できないといわれています。しかし、放射線によく反応し、がんが縮小したり、黄疸が緩和されるなどの効果がみられることがあります。骨への転移などがあって痛みが激しいとき、それを和らげるための緩和療法としても行われます。
⚫️副作用
やけどのような症状をや起こすことがあります。色素が沈着したり、かゆみが起こることもあります。
胆道がんは、再発する可能性が高いがんです。手術後も5年間は、腫瘍マーカーをや血液検査・CT検査などの定期検査を受けます。再発した場合は、抗がん剤による化学療法が行われます。
⚫️毎年新たに胆道がんになる人 年間約1万8000人
⚫️胆道がんの死亡者数 毎年約1万7000人
⚫️男女比 3対1
⚫️病期別5年生存率(胆のうがん)
1期 90・1パーセント
2期 74パーセント
3期 41・9パーセント
4期 5・4?24パーセント
⚫️病期別5年生存率(胆管がん)
1期 90パーセント以上
2期 35?45パーセント
3期 15?20パーセント
4期 5?7パーセント
⚫️よくある胆道がんの後遺症
胆のうや胆管を切除した場合、胆汁の分泌が減少しますので、消化不良や下痢などを起こす場合があります。