末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

腎臓がん

腎臓がん(腎細胞がん)の特徴

腎臓がんは、すべてのがんの1%

腎臓は腹部の左右に1つずつあり、血液をろ過して尿を作り、血中の老廃物を排出するはたらきがあります。また、血圧をコントロールするホルモンなども生成しています。

腎臓がんになる人は、がんにかかった人の約1パーセントという非常に稀ながんです。腎臓がんの男女比は3対1と男性に多く、罹患率は40代から増加し、50歳代、60歳代に発症のピークがあります。小児に多く発生するものにウィルムス腫瘍というものがあります。

初期症状に乏しく早期発見がむずかしいがん

腎臓がんには、尿細管の細胞ががん化した「腎細胞がん」と、尿路の細胞ががん化した「腎盂がん」の2つありますが、それぞれ性質や治療法はまったく異なります。一般的に腎臓がんというと、腎細胞がんのことを表し、腎臓がん全体の約80パーセントを占めています。 ここでは腎細胞がんについて解説していきます。

腎臓がんは初期症状に乏しく、転移しやすく、とくに肺と骨に転移しやすい特徴があります。 腹痛や血尿などといった症状が現れた時には、すでにかなり進行していることがほとんどで、他の臓器に転移してから発見されることもめずらしくありません。腎臓がんの患者さんのうち2割ほどはすでに転移しているというデータもあります。

腎臓がんは罹患者数が少ないため、検診の体制は整っていませんが、50歳を過ぎたら(もしも家系的にリスクが高いと思われる人は30代から)、ぜひ年に1度は尿検査と血液検査も受けておくことをお勧めしています。尿検査では、目に見えない血液も発見できますし、血液検査では貧血や血清カルシウム濃度など、腎機能の状態を調べることができますので、早期発見につながります。

腎臓がんの発生原因

腎臓がんになってしまった原因

腎臓がんになると、「なにが原因でがんになったのだろう?」と多くの方が自分の人生を深く見つめ直すきっかけになります。

しかし、なぜ腎臓がんになったのかは、実はだれにも分かりません。危険な因子がなくてもがんになりますし、どんなに危険な因子が多くあっても、がんにならない人もたくさんいるのも事実です。

腎臓がんになるリスクが高まる因子は以下のとおりです。

1.たばこを長期間吸っている
喫煙者は非喫煙者に比べ2倍のリスク

2.生活習慣病、とくに高血圧がある

3.野菜や高血圧のリスクは2倍果物をあまり食べない肉中心の食事
血液がドロドロになって腎臓に負担をかけやすい

4.肥満である
肥満のリスクは4倍

5.慢性腎炎などで人工透析を長年続けている

6.塩辛いものが好き

7.血縁者に腎臓がんを発症した人がいる

8.利尿剤を長期間服用している

9.その他
石油由来の有機溶媒(トリクロロエチレン)やカドミウム、アスベストにさらされる仕事に就いていたり、ストレスも危険因子です。ストレスは免疫力を低下させることがわかっています。

ストレスを溜め込まず、だれかに「話す」(=放す)ことで、執着から解放されて自分から手放すことができます。わたしはいつでもあなたのお話を聞く準備はできています。

症状と検査の方法

初期症状はほとんどないが・・・

・お腹にズキズキと疼くような痛みがある
・血尿
・下腹部にしこりのような違和感がある

少し進行すると・・・

・発熱
・食欲不振 
・貧血
・体重減少
・全身の倦怠感

検査方法

ステップ1 問診
問診では、次のような質問があります。受診前にまとめておくとよいでしょう。

・いつから症状が現れたか、悪くなっているか、良くなっているか?
・他の病院を受診したか、治療を受けてきたか、先生の診断は?
・今までに入院するような病気になったか、手術を受けたことがあるか、内服している薬はあるか?
・アレルギー体質かどうか?
・血縁関係の人にがん体験者やその他のがんの治療経験があるか?
・血尿はないか

ステップ2 尿検査・ 超音波検査・CT検査・MRI検査 
身体に負担をかけずに簡単に行える検査として、尿検査と超音波検査を行います。尿検査では、尿に血が混じっていないか、またがん細胞がないかを検査します。超音波検査は、検査機器の精度が上がったことで、小さな腎臓がんも早期発見できるようになってきています。腎臓の動きと血流なども評価できるため、手術ができるかどうか判断するための有用な指標となります。

もし、ここで疑いがある場合は精密検査として、CT検査とMRI検査を行います。

ステップ3 ステージの確定と治療方針の決定
腎臓がんの病期は、TNM分類に基づいて分類され、腎細胞がんの直径が4センチ以下で腎臓にとどまっている「T1a」から、別の臓器に転移がある「M1」まで分類されています。

腎細胞がんの標準治療法は一般的には外科手術で、腎臓にある腫瘍を放射線や薬物療法で根治するのは難しいとされています。すでに転移がある場合や再発がん腫瘍を治療する場合は、薬物療法が治療の主体となりますが、有用と考えられる場合は外科手術や放射線治療を行う場合があります。

また、病期を問わず、体と心のつらさを和らげる緩和ケアを同時に行うのが一般的です。

検査における患者さんへのアドバイス

疑問・不安を解消することで、患者と医師の“信頼関係”は築かれる

たくさん行われる検査に、不安を感じられる方も多いことでしょう。もし、不安があれば、遠慮せず、担当医師に次のように医師に質問してみましょう。

「いま、なにを調べるための検査なのですか?」
「その検査は、本当にやる必要はあるのですか?」
「自分はいまどのステージですか?」
「今後、どのような治療をしていくのがベストですか?」
「QOL(生活の質)をなるべく落とさない治療法はどれですか?」

ご自分から、積極的に質問していきましょう。このような会話を交わすことで、おたがいに“信頼関係”を築くことができます。「安心して治療に向きあえる」という土台づくりこそが、腎臓がんに負けないファーストステップです。

腎臓がんでおこなう主な治療法について

腎臓がんの治療は、主な治療法として、手術(外科治療)と抗がん剤治療(化学療法)の2つの組み合わせです。腎臓がんは、抗がん剤による薬物療法(化学療法)にあまり感受性が高くない(薬があまり効かないことを医師はこのような表現をすることがあります)がんとして知られています。

しかし、「分子標的薬」という新しい種類の薬剤が開発され、治療にも積極的に使用されるようになってきています。

手術(外科治療)

転移のある進行腎細胞がんでも、「腎摘出術」を行う場合があります。この場合、手術療法のみで根治が見込めることはありませんが、根治しなくても、摘出を行った方がその後の治療成績が良いともいわれています。

がん細胞のある腎臓を周囲の脂肪組織とともに一塊に切除する根治的腎摘出術で行うことが一般的です。

1)腎部分切除術:腫瘍が小さければ、腎機能を可能な限り温存するために行われます。
2)根治的腎摘出術:がん細胞のある腎臓を周囲の脂肪組織とともに切除。

●メリット
転移や再発率を下げることができ、根治が見込めない転移のある進行腎細胞がんに対しても行われることがあり、摘出したほうがその後の治療成績が良いともいわれています。

抗がん剤治療(化学療法)

一般的に腎細胞がんには抗がん剤は有用ではないとされてきましたが、近年、腎細胞がんの発がんや進行のメカニズムが解明されつつあり、「分子標的薬」といわれる新しい種類の薬剤が開発され、治療にも使用されるようになってきました。

「抗がん剤は毒だ。医者の金儲けのために患者は利用されている」といった話がまことしやかに語られています。抗がん剤を使用中は、一時的に免疫力は落ちますが、治療後は体力は徐々に回復するので、けっしておそれるものではありません。

・分子標的薬 
現在、日本では、2008年にソラフェニブ、スニチニブが承認され、その後、エベロリムス、テムシロリムス、アキシチニブが保険適用となって治療に使用されています。

・サイトカイン療法
インターフェロンαやインターロイキン-2などの薬剤を用いて治療を行います。

●メリット
・転移があっても、がん細胞の増殖を抑えて攻撃できる。
・ 最近では、多くの施設で外来化学療法が可能です。
 
●副作用
薬物療法は、正常な細胞も攻撃することになるので、薬物有害反応(いわゆる副作用)が生じることがあります。倦怠感、脱毛、嘔気、下痢、発熱、出血、脱水などです。女性ならば、将来的に妊娠・出産を希望するときは、まえもって担当医に相談しておくことが大切です。

しかし、近年では副作用に対する治療(支持療法ともいわれています)が、かなり進歩してきています。担当医に「副作用の症状を軽減させるための治療はありますか?」と相談してみましょう。

腎臓がんについてのデータ

手術後ケア(血液検査とCT検査による定期検診の頻度)

3年まで  半年〜1年ごと
5年まで  1年ごと
6年以降〜 2年ごと
※通院の間隔は病状や治療後の経過などによって異なります。

■日本人の腎臓がん発症数 毎年1万2000人

■腎臓がんの死亡数 毎年約4100人

■治療後の5年生存率
1期 75%
2期 63%
3期 38%
4期 11%

■再発
腎臓がんは、治療してから10年以上経ってからでも再発する可能性があるがんです。腎臓がんの腫瘍の大きさが5センチ以上で再発率が高くなります。