末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

患者力って一体何?

患者力というのは、積極的に医療に参加していくということですね。人に任せない、ドクターに任せないで、納得のできる医療を受けること。主治医と対等に話し合う。しっかりと自分の意思を伝えていく。後悔しないということです。

これはよく言うのですが、先生なんか簡単にコントロールできますので、皆やり方を覚えれば。多くの先生は一日に50~100人患者さんがいて、電子カルテを打って、患者さんを一切見ない先生もいます。要するに流れ作業になっているのですね。

じゃあ、薬を出しますね、検査入れますね、と電子カルテとおしゃべりしている。そういう先生が多いので、その先生をこっちに向ける。先生の目を覗き込むとか、先生の名前を呼んで自分のほうを向かせる。先生と会話していく中で、先生の実力や、先生の人間性を見極めていく。

当直明けに外来をやっていると至近距離なので、目が赤いとか、ちょっと疲れていませんか?とか、髪が乱れていますよ、とか、皆さんよくみていらっしゃるので油断できないんですが、そういう形で、お互い相手のことを気遣いながら、個人対個人という形で会話をしていくと、人間性も見えてきたりします。

そういう患者力というのが必要です。それを受け止めてくれる医師力というものも必要だと思っているのですが、これも医師たちにも磨いていってもらいたいな、という風に思っています。

患者力があれば、情報発信して本を出される方もいらっしゃいます。前向きな考え方をもって、その他大勢から卒業して欲しい。

皆さんが心を開くと、先生も心を開いてくれるので。それはお互いのコミュニケーションということで。自分の思いをどうやったら相手に伝えられるかということが大事です。

患者力は鍛えられます。そうすると病院が楽しくなってくる。待ち時間長いとかよく言われますが、せっかく行くのですから何か楽しみを見つけていくというのが大切だな、と思います。

救急外来で金属バットみたいなものを振り回している人がいて、皆怖くて近づけなくて遠くから見ている。何で怒っているのかな、絶対なにか理由があるのだろうなと思って。

酔っ払っている人や怒鳴っている人は大体隣に行って肩をぎゅっと抱くと、心を開いてくれるのですね。怖いことは怖いのですが、それで何か私に何かあったとしても、その人の心の苦しみが少しでもわかって、それを皆に伝えられたらいいなと思うので、そういう時、よく飛び込んでいくのです。

その人は馬鹿やろうと言っていて、隣に行ってぎゅっとして、どうしたどうしたというと、「受付のやろうが馬鹿にしやがって」というようなことで。結局自分が大事にされていないということを、すごく不平不満に思ったのですね。

患者さんたちは外来で入ってきて、先生に冷たくされればやっぱり納得できないし、受付でもきちんと対応してもらえないと怒りがこみ上げ来ますので、私たちはきちんと患者さんの思いというものを分かっていかないといけない。

「クレーマーよ、あの人は」という言葉は、私は絶対に言ったことは無いです。何か理由があるんでしょうとスタッフにも言っています。病院に行くとあの先生に会えるというような存在に皆がなっていけたら良いなと思っています。

患者力を発揮していく、ということで、いろいろヒントを言ってきましたが、主治医をはっとさせたら良いですね。自分の話を聞くように、流れ作業が中断するように、自分が一人の個人だということを意識させればいい。

そのためには皆さんも輝かなければいけない。極端な話、指先まで美しくして主治医をはっとさせる。そういうアイテムとか、自分のお気に入りのものを持っていって、ちらりと見せるとか。

いい関係を作っていくというのが大切だなと思います。医師と友達になるのもいいし、スタッフからこっそり先生の趣味とか情報を聞き出して、近づいていく。

人間対人間です。先生と思わないで、ちょっと医師の免許を持っている友達、みたいな感覚のほうが、怖がらなくて済むと思います。先ほども言いましたが、名前を呼んで、一対一、個人対個人という事を意識させて、先生任せにしないで、私も勉強していますよ、という姿勢を見せていく。

みなさん、もうわかっていらっしゃいますが、結局は、患者さんは弱者なので、弱者が強者になるための方法が、「患者力を鍛える」、ということです。

人生においても、情報を集めたり、仲間を集めたり、予防していくということ、病気を早期発見していくということ、後は病気になってもそういういろんなところでドクターと友達になったり、医療スタッフと友達になっているようなことがあれば、慌てずに済むのではないかと思います。

病院は怖いな、ではなくて、たいしたことではないな、自分の健康を維持する為に病院を利用してやろう、というくらいの気持ちでいて欲しいなと思います。専門家たちを味方につけながら、仲間を増やして上手に時間を利用して、自分の思いや考え方をまとめておいたりとか、疑問点をまとめて置いたりとかしていって欲しいなと思います。

なぜ私は緩和ケアをやっているかというと、やっぱり輝いていて欲しい。皆輝いていて欲しい。

これは80代の男性でがんの末期の方です。少し黄色くなっています。私は往診を週一回だけさせていただいているんですが、両手でピースして、ご家族に囲まれて、幸せな感じで、お写真の二日後に亡くなられました。

やはり人生を最後まで輝かせるためのお手伝いができたらいいなと思っていますし、皆さんも人生を輝かせるためのヒントをこちらで得られたら良いなと思って、こういう企画をしました。