肝がんは、肝細胞がんともいわれます。年齢別にみた肝臓がんの罹患率は、男性では45歳、女性では55歳から増加し始めます。かつては、胃がん、肺がんに次いで死亡者数3位でしたが、近年では大腸がんに追い抜かれ4位となっています。
わが国ではB型とC型肝炎ウイルス感染が原因で生じる肝細胞がんが90パーセントを占めており、とくに最近では全体の70パーセントはC型肝炎ウイルス感染が原因です。
肝がんは、肝臓から発症する「原発性肝がん」と、他臓器のがんが転移して起こる「転移性肝がん」の2つに大きく分かれます。肝臓は、各臓器からの血液が肝臓に向かうため、他の場所にできたがんが転移しすい臓器です。とくに胃がん・すい臓がん、次に大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がんなども転移しやすいのが特徴です。
肝臓は、重さが1・2?1・5キログラムもある人間の身体の中でもっとも大きい臓器です。主な役割は、「貯蔵」「代謝」「解毒」です。脂肪を分解する胆汁の生成も行っています。
肝臓は、とても丈夫な臓器なので、少しくらい腫瘍ができても機能低下しないので、自覚症状がでにくいがんの1つです。肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれれるゆえんです。
肝炎ウイルス感染者(B型肝炎、C型肝炎)は日本で210万?280万人いると推測されていますが、その3割の人は自分が感染していることに気づいていないと考えられています。血液検査で肝炎ウイルス検査を受けられます。ぜひ、一生に一度は検査してみることをお勧めします。採血してから1週間~数週間後には検査結果がわかります。
肝がんになると、「なにが原因でがんになったのだろう?」と多くの方が自分の人生を深く見つめ直すきっかけになります。
しかし、なぜ肝がんになったのかは、実はだれにも分かりません。危険な因子がなくてもがんになりますし、どんなに危険な因子が多くあっても、がんにならない人もたくさんいるのも事実です。
ここで大切なのは、危険因子がもしあれば、生活からそれをとりのぞくことです。「生活を変える」「意識を変える」「自分を変える」。自分が変われば肝がんが再発しにくい、あるいは転移しにくい体内環境をつくることにつながります。
ではここで危険因子をご紹介しましょう。
1.肝炎ウイルスの感染
B型とC型肝炎ウイルス感染が原因で生じる肝細胞がんが90パーセントを占めますが、肝炎ウイルスが通常の生活で他の人に感染することはありません。もし家族に肝炎の人がいても、食器やタオルを別にする必要はありません。
B型肝炎には、C型肝炎と異なりワクチンも開発されておりますので、予防できるウイルスです。
2.大量飲酒
肝硬変を起こしうる原因は、肝がんになる原因をつくります。
3.食事に混入するカビ毒のアフラトキシン
4.脂肪肝
5.不安やストレス
ストレスは免疫力を低下させることがわかっています。ストレスを溜め込まず、だれかに「話す」(=放す)ことで、執着から解放されて自分から手放すことができます。わたしはいつでもあなたのお話を聞く準備はできています。
・腹部のしこりや圧迫感
・お腹の痛み
・お腹が張った感じ
・全身倦怠感
・食欲不振
・疲れやすい
・体重の減少
・強い黄疸
・腹水による腹部膨満感
・むくみ
・激しい腹痛
・激しいかゆみ
ステップ1 問診
問診では、ていねいにお話をうかがっていきます。次のような質問がありますので、受診前にまとめておくとよいでしょう。問診のあと、いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
・ 他の病院を受診したか、治療を受けてきたか、先生の診断は?
・ 今までに入院するような病気になったか、手術を受けたことがあるか、内服している薬はあるか?
・ お酒はどれくらい飲むか?
・ アレルギー体質かどうか?
・ 血縁関係の人にがん体験者やその他のがんの治療経験があるか?
ステップ2 検査と診断
主な検査は、血液検査(腫瘍マーカー測定)と腹部超音波検査です。肝がんの腫瘍マーカー(がん細胞ができると血液中に増える特殊な物質)はAFPです。
直径が2センチ以下の小さながんなどでは確認が難しいこともあるので、細い針を刺し組織を採取し、病理検査にかけます。ただし、針生検には腫瘍をばらまいてしまうリスクがあります。この検査が行われるときは、医師にその必要性の有無をしっかり確認しましょう。
ステップ3 ステージの確定と治療方針の決定
肝がんの病期は、1期、2期、3期、4期に分類されています。主な治療法として、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つあり、これらを組み合わせ、どのように治療するのかは、患者さんの状態や、がんの進行度などによって決められます。
医師は患者さんとよく話しあいながら、今後どの治療法がもっとも適切かを提案し決定していく、というのが一般的な流れです。
たくさん行われる検査に、不安を感じられる方も多いことでしょう。もし、不安があれば、遠慮せず、担当医師に次のように医師に質問してみましょう。
「いま、なにを調べるための検査なのですか?」
「その検査は、本当にやる必要はあるのですか?」
「自分はいまどのステージですか?」
「今後、どのような治療をしていくのがベストですか?」
「QOL(生活の質)をなるべく落とさない治療法はどれですか?」
ご自分から、積極的に質問していきましょう。このような会話を交わすことで、おたがいに“信頼関係”を築くことができます。「安心して治療に向きあえる」という土台づくりこそが、肝がんに負けないファーストステップです。
肝がんの治療は主に、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つです。ただし、原発性の肝臓がんの場合、9割の患者さんが肝炎ウィルスの感染を経て、慢性肝炎→肝硬変→肝がんという順で、すでに肝機能障害をわずらっていることがほとんどです。
お一人おひとりの肝臓の状態がどれくらい肝臓がダメージを受けているか(肝障害度)がとても重要です。
腫瘍を取り除く手術ですが、適応となるのは1?2割程度です。肝臓には自己修復機能があり、4分の3を切り取っても、残りが健康な状態であれば問題はないとされています。
肝切除術の治療成績は、平均して1年生存率が約90パーセント、3年生存率が約70パーセント、5年生存率が53パーセントです。ステージが早期であればあるほど、この数値は上がります。
肝臓がんは他のがんと比べると、手術ができる段階でリンパ節転移することは非常にまれですので、リンパ節郭清は基本的に行われません。
⚫️メリット
がん細胞を取り除くことによって、再発や転移を防ぐ効果が期待できます。
「抗がん剤は毒だ。医者の金儲けのために患者は利用されている」といった話がまことしやかに語られています。抗がん剤を使用中は、一時的に免疫力は落ちますが、治療後は体力は徐々に回復するので、けっしておそれるものではありません。
治療の目的は、術前化学療法、術後化学療法、遠隔転移に転移があるとき、または転移がなくても再発する可能性が高いとき、再発してしまったときの治療法としておこないます。また、手術ができるがんに対して薬物療法を行い、できるだけ小さくしてから手術にのぞむ場合もあります。
錠剤やカプセルなどの「のみ薬」と、「点滴や注射などで血管(静脈)に直接抗がん剤を注入する方法」があります。薬物療法には、以下の2つの種類があります。2009年、「ソラフェニブ(ネクサバール)」という新しいタイプの抗がん剤が、初めて原発性肝臓がんに適応となり、肝切除のできない症例の中でも肝機能があまり失われていなければ、この薬が標準治療として推奨されています。
1.化学療法:化学物質によってがんの増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療
2.分子標的治療:分子レベルでがん細胞だけを標的にした薬を用いて行う治療。
3.動注化学療法:肝臓に直接抗がん剤を注入する治療。
⚫️メリット
・ 転移があっても、がん細胞の増殖を抑えて攻撃できる。分子標的治療であれば、従来の抗がん剤よりも副作用が少ない。
・ 入院せず外来での治療もできる。
⚫️副作用
薬の種類によって重篤な下痢をおこすものやアレルギーがある人には向かない薬もあります。薬物療法は、正常な細胞も攻撃することになるので、薬物有害反応(いわゆる副作用)が生じることがあります。
血液細胞が減ったり、口の中や胃腸の粘膜の再生が起こりにくくなったり、髪の毛や爪が伸びなくなったり、風邪をひきやすくなったり、貧血、吐き気、口内炎、脱毛など。女性ならば、将来的に妊娠・出産を希望するときは、まえもって担当医に相談しておくことが大切です。
しかし、近年では副作用に対する治療(支持療法ともいわれています)が、かなり進歩してきています。担当医に「副作用の症状を軽減させるための治療はありますか?」と相談してみましょう。注射(点滴)薬と内服(経口)薬があります。
高エネルギーのX線やγ線により病巣をピンポイントで狙い撃ちできる定位放射線療法が確立されました。X線やγ線以外にも、陽子線や重粒子線を使った新しい放射線療法も肝がんの治療において大きな注目を集めています。
ただし、まだ健康保険の対象ではなく、費用が非常に高額のでよく医師と相談しましょう。
⚫️副作用
やけどのような症状をや起こすことがあります。色素が沈着したり、かゆみが起こることもあります。
手術後2?3日で歩けるようになり、1か月で退院でるのがほとんどです。定期検診として、およそ3か月に1度の頻度で受診し、血液検査や画像検査を受けます。
⚫️毎年新たに肝がんになる人 年間約4万人(うち男性が3万人)
⚫️肝がんの死亡者数 毎年約3万5000人
⚫️男女比 3対1
⚫️病期別5年生存率(2014年10月)
1期 55・9パーセント(胃がん97%、大腸がんでは99%)
2期 41・7パーセント
3期 16・4パーセント
4期 7・1パーセント
⚫️再発率
がんの中でも再発が高く、予後の悪いがんです。肝切除術を行っても、肝炎や肝硬変までは治すことができないため、がん再発率は80パーセントです。
⚫️肝がん術後に肝臓再生を早める食事
肝臓の再生を早めるには、口から食事をとります。再生促進のためにはたんぱく質が重要ですが、脂肪代謝がうまくいかない人は、動物性脂肪ではなく大豆からたんぱく質をとります。ビタミン、ミネラルが豊富な緑黄色野菜や海藻、豆類を積極的とりましょう。