わが国では、毎年3万人以上の方が膵臓がんで亡くなっており、日本のがんにおける死因としては、男性が第5位、女性が第6位(平成18年人口動態統計)です。60歳以上(70代がピーク)の男性にやや多い傾向にあります。
特徴は、難治性のがん、症状がほとんどでない、検査で見つけにくい、再発率が高い、死亡者数・罹患者数ともに年々著しく増加していることです。治療が難しく、消化器がんのなかでもっとも予後が不良です。罹患率と死亡率はほぼ等しく、膵臓がんの生存率が低いことを表しています。
しかし、早期発見や治療法の研究も進められています。厚生労働省研究班は、膵臓がん患者は健康な人と比べ、血液中の特定のたんぱく質が減少することを発見し、早期の膵臓がんでも9割以上の精度で見つけることも確認されています。血液中のがんに特徴的な物質を調べる腫瘍マーカー検査と併用すると、精度は99%以上になります。
膵臓は胃の後ろにあり、食物の消化を助ける消化酵素や血糖値を調整するホルモンを分泌します。
膵臓がんは、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つけることは難しいがんです。胃や十二指腸・小腸・大腸などに囲まれ、身体の深い部分に位置するため、がんが発生しても見つけにくい傾向にあります。 90パーセント以上は、膵管の細胞にできます。
自覚症状に乏しく、初期症状があったとしても膵臓がんを特定づけるのが難しいため、膵臓がんとわかったときにはすでに進行してしまっています。患者の8割は見つかった段階で3期~4期に進行しています。また、極めて悪性度が高く、たとえば2センチ以下の小さながんであっても、すぐに周囲(血管、胆管、神経)への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うケースが多いのが特徴です。
膵臓がんになると、「なにが原因でがんになったのだろう?」と多くの方が自分の人生を深く見つめ直すきっかけになります。
しかし、なぜ膵臓がんになったのかは、実はだれにも分かりません。危険な因子がなくてもがんになりますし、どんなに危険な因子が多くあっても、がんにならない人もたくさんいるのも事実です。
ここで大切なのは、危険因子がもしあれば、生活からそれをとりのぞくことです。「生活を変える」「意識を変える」「自分を変える」。自分が変われば膵臓がんが再発しにくい、あるいは転移しにくい体内環境をつくることにつながります。
ではここで危険因子をご紹介しましょう。
1.飲酒や喫煙
喫煙は、確立した危険因子です。
2.糖尿病と急性膵炎
3.不安やストレス
ストレスは免疫力を低下させることがわかっています。ストレスを溜め込まず、だれかに「話す」(=放す)ことで、執着から解放されて自分から手放すことができます。わたしはいつでもあなたのお話を聞く準備はできています。
・黄疸(身体や白目が黄色くなる)
・身体がかゆい
・尿の色が濃い
・食用不振
・体重減少
・腹部痛(上腹部と腰背部)
・便の色が灰白色(無胆汁性)
ステップ1 問診
問診では、ていねいにお話をうかがっていきます。次のような質問がありますので、受診前にまとめておくとよいでしょう。問診のあと、いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
・排便の様子、便の色、いつから症状があらわれたか?
・他の病院を受診したか、治療を受けてきたか、先生の診断は?
・今までに入院するような病気になったか、手術を受けたことがあるか、内服している薬はあるか?
・アレルギー体質かどうか?
・血縁関係の人に膵臓がん体験者やその他のがんの治療経験があるか?
ステップ2 検査と診断
腹部の超音波検査、CT検査を行います。
ステップ3 ステージの確定と治療方針の決定
膵臓がんの病期は、1期、2期、3期、4期に分類されています。主な治療法として、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つあり、これらを組み合わせ、どのように治療するのかは、患者さんの状態や、がんの進行度などによって決められます。
医師は患者さんとよく話しあいながら、今後どの治療法がもっとも適切かを提案し決定していく、というのが一般的な流れです。
たくさん行われる検査に、不安を感じられる方も多いことでしょう。もし、不安があれば、遠慮せず、担当医師に次のように医師に質問してみましょう。
「いま、なにを調べるための検査なのですか?」
「その検査は、本当にやる必要はあるのですか?」
「自分はいまどのステージですか?」
「今後、どのような治療をしていくのがベストですか?」
「QOL(生活の質)をなるべく落とさない治療法はどれですか?」
ご自分から、積極的に質問していきましょう。このような会話を交わすことで、おたがいに“信頼関係”を築くことができます。「安心して治療に向きあえる」という土台づくりこそが、膵臓がんに負けないファーストステップです。
膵臓がんの治療は主に、手術(外科治療)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の3つです。
発見された時には、すでに進行していることが多く、切除可能なのは4割前後です。手術単独で治癒することはほとんどないため、病期に関わらず、手術の後に化学療法(術後補助化学療法)を行うことが推奨されています。患者の体力を低下させないため、できるだけ周辺臓器を残す手術を目指しています。
●メリット
・がん細胞を取り除くことによって、再発や転移を防ぐ効果が期待できます。
「抗がん剤は毒だ。医者の金儲けのために患者は利用されている」といった話がまことしやかに語られています。抗がん剤を使用中は、一時的に免疫力は落ちますが、治療後は体力は徐々に回復するので、けっしておそれるものではありません。
治療の目的は、術前化学療法、術後化学療法、遠隔転移に転移があるとき、または転移がなくても再発する可能性が高いとき、再発してしまったときの治療法としておこないます。また、手術ができるがんに対して薬物療法を行い、できるだけ小さくしてから手術にのぞむ場合もあります。
錠剤やカプセルなどの「のみ薬」と、「点滴や注射などで血管(静脈)に直接抗がん剤を注入する方法」があります。薬物療法には、以下の2つの種類があります。
1)化学療法:化学物質によってがんの増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療
2)分子標的治療:分子レベルでがん細胞だけを標的にした薬を用いて行う治療。
●メリット
・転移があっても、がん細胞の増殖を抑えて攻撃できる。
・入院せず外来での治療もできる。
●副作用
薬の種類によって重篤な下痢をおこすものやアレルギーがある人には向かない薬ものあります。薬物療法は、正常な細胞も攻撃することになるので、薬物有害反応(いわゆる副作用)が生じることがあります。
血液細胞が減ったり、口の中や胃腸の粘膜の再生が起こりにくくなったり、髪の毛や爪が伸びなくなったり、風邪をひきやすくなったり、貧血、吐き気、口内炎、脱毛など。女性ならば、将来的に妊娠・出産を希望するときは、まえもって担当医に相談しておくことが大切です。
しかし、近年では副作用に対する治療(支持療法ともいわれています)が、かなり進歩してきています。担当医に「副作用の症状を軽減させるための治療はありますか?」と相談してみましょう。注射(点滴)薬と内服(経口)薬があります。
手術が難しい患者さんに対し、放射線と抗がん剤による治療でがんを小さくしてから切除する「術前化学放射線療法」も行います。
手術後は再発を防ぐため抗がん剤治療を行います。切除後は消化酵素の分泌が不十分になり、栄養障害に陥りやすくなります。抗がん剤に負けない体力を維持するため、消化酵素薬の投与を行います。膵臓を全摘した場合には永久的にインスリン注射が必要になります。
⚫日本人の膵臓がん発症率 人口10万人あたりの罹患率はほぼ10人
⚫️膵臓がんで死亡する人 年間約3万人(肺がんは7万人)
⚫️病期別5年生存率(2014年10月)
手術後の5年生存率は10?15パーセントと低く、消化器系のがんの中では最も低い数字となっています。
1期 57パーセント
2期 44パーセント
3期 24パーセント
4期 3.11パーセント
⚫️糖尿病を有した場合の危険率
糖尿病を有する男性では膵がんの危険率2.12倍、女性は1.5倍。
⚫️再発率
すい臓がんは手術ができたとしても約9割が3年以内に再発。
⚫️よくある膵臓がんの後遺症
腸閉塞や血栓症、糖尿病、胆管炎。術後に長く横たわることが腸管の癒着、運動低下。気道内挿管や吸入麻酔の影響で痰がたまりやすく肺炎にかかりやすくなります。