食欲がおち、体重、体力が低下してくると、本人はもちろん家族や介護者も精神的に不安や焦りが出てきます。
見守る家族などが一緒に不安になると、「自分の気持ちを解ってくれている」と感じることもある反面、「そんなに悪いのだろうか」、と本人は更に心配になることがあります。
その境界線は個人差が大きいものの、本人に、「涙がでてくる」「ごめんね、すまない」という言葉が出はじめる」などが見られたならば、
見守る側は不安感を口にださないほうが良いでしょう。
そのようなときは、本人から不安や悩みを聞き出して、代わりに主治医や看護師に相談するなどして不安を一緒に解消していくと、本人に治療意欲が湧くことがあります。
すると、自然に
「治療を乗り越えるには体力をつけないと」と前向きになり、食べる意欲がでてきます。
意欲を持って楽しく食事をすることによって、始めて「食事の効果」がでてきます。食事内容が、がんの進行に影響を与えることはありません。食事内容について医師の指示が無い場合、「好きな時に好きなものを食べられる量を」ということが基本になります。
食べることができる食品の数が多いほど、栄養のバランスが取りやすく、食品のもつ効果が発揮されやすくなります。
このため、具の多いスープや味噌汁、ポトフや肉じゃがなど、1つのメニューで使う食材が多い料理が、食事の効果を出しやすくします。
また、限られた食欲のなかでは、食べる食材数のバラエティーを豊富にするのが一番です。ごまをふりかける、海苔で巻くといったささいなことでも、食べる食材数が増えます。
使う食材数が多いメニューは、手の込んだ料理や、一度にたくさん出来てしまうものになりがちです。そのため、毎食、毎日実現するのは負担になります。
家族でわけあって食べる、あるいは冷凍保存をするなどしましょう。
余ったからといって、連続して食卓に出すと、健康な人よりもはるかに大きく
「またか」と感じて食欲を落としやすい状態になっています。
そこで、彩りになる緑の野菜(さやいんげんや青ねぎ、ブロッコリーなど)を別ゆでにしておいて、料理を出すたびに後から追加して緑色が鮮やかな一皿にすると、同じメニューでも食欲が沸きやすくなります。
かつて1日30品目を食べましょうというスローガンがありましたが、いまは削除されています。これには様々な理由があるのですが、一般家庭では実現が難しいということも理由の一つです。プロの管理栄養士でも、自宅での食事作成は1日20~25品目が精一杯です。30という数字は気にせず、
「できるだけ使う食材やメニューにバラエティを持たす」ということを心がけましょう。