末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

素敵な人生にするために

素敵な人生にするために、受け容れて行動していく。

これはとても難しいと思うかもしれませんが。

たとえば私が乳がんですよとお伝えした時に、患者さんにいろいろな反応をされる方がいます。

一人はわかりました、と、とても心の準備ができている方ですね。

わかりました、戦います。私の娘は障害を持っているので、娘のためにも私は勝ち続けなければいけない、ということをおっしゃって。

全ての治療、手術とか抗がん剤とかホルモン治療とか、これを受け容れます。

負けるわけにはいきませんと。

何か自分の宝物を持っているととても強くなれます。

また別の患者さんは、乳がんですよ、と伝える前はタバコのにおいをぷんぷんさせながら入ってきて、何なの私の病気は、なんと言われてもタバコは止めないわよ、とおっしゃって入ってきて。どうしようかな、こまったな、と思いました。

私たち、ドクターは患者さんに部屋に入ってきてもらう時に、全ての先生がそうかはわかりませんが、結構その方の顔を思い浮かべて、私がこういう話の仕方をすると、こういう反応が返ってくるかもしれないな、といろいろなシュミレーションをするんですね。

入っていらっしゃる前に、この方はいろいろ悩んでしまっているから、きっと入ってくる時にうつむきながら入ってくるから、肩をぎゅっとしてから始めようかな、と自分なりにいろいろシュミレーションをするんですね。

流れ作業で、○○さんどうぞ、と言っているわけではなくて、その方をお呼びする時には必ず、いまどういう心理状態なのかな、この前はああいう風に最後、結果は二週間後にわかりますよ、という形でお伝えして、二週間もしかしたら眠れていないかもしれないな、とかいろいろ想像するんですね。

その上でお呼びするんですね。

で入っていらっしゃって、タバコくさくて、手術するとしたらタバコは肺炎になってしまうからどうしようかなとかですね、いろいろ考えて、今日は乳がんと初めてお伝えしないといけないから、少し私も覚悟の気持ちを持ってお話しないといけない。

軽い気持ちで乳がんとは私は言っていません。

その方がこれからどういう心理状態になるか、これから二週間、悩んでしまうかもしれない、その二週間をどうやってサポートしようか、とか。

治療が、手術して抗がん剤をするかもしれない、ホルモン治療やるかもしれない。

これから5年10年、ずーっとこの方を支え続けなければいけない、そのくらいの覚悟が自分の中でできた時に初めて乳がんですとお伝えしています。

ですから、入っていらっしゃる時には、私は相当な覚悟で持って、受け容れています。

その方がぷかぷかしている、タバコくさいというとですね、どうしようかな、どうやって一緒に覚悟を持ってもらうかな。

それは二人の温度差を埋めていくしかないです。

丁寧にお話をして、手術の時には、全身麻酔なのでタバコは危険ですので、今日からでも止めないといけないですよ、というと、彼女は強がって、やめないわよ、というんです。

強がりな方にはそういう方の心をくすぐるようなですね、そういっても二週間後にはちゃんと止めてくるから大丈夫大丈夫とかね。

いろいろ本当にその方をサポートしたいので、あの手この手でお話をするんですが、この方が5年後も10年後も元気でいられるにはどうしたらいいか。

ドクターによっては禁煙しないから手術しないから別にそのつもりでねとか、冷たく言う先生もいるんですけれども。それは何のメリットも無く、マイナスで、二度と来てくれないかもしれない。

その方がちゃんと受け容れてくれれば、病気を治せるのに、そういうドクターのせいで、医療スタッフの心無い言葉のせいで、その方の命を奪ってしまうとしたらそれは病院の責任というのは許されるものではないので、病院の対応とかドクターの対応というのはとても大事です。

状況をお話して、じゃあ、二週間後に会おうねと、話をして、その方は二週間後に、がらがらっと笑顔で、がらがらっとドアは言わないですけど、がらがらっと開けて入ってきて、先生、タバコ止めたよ、と言ってですね。

きっぱりやめて、覚悟を持って来てくれた。一緒に受け容れていくというのはとても大事で、特に抗がん剤の治療って、髪の毛が抜けてしまうんですね。

これはたとえば予防として手術後に抗がん剤をやりますよというと、半年間抗がん剤をしないといけない。

その時も私が患者さんにお願いをするのは、髪の毛、抜けてしまうから心の準備をしなければいけない。髪の毛が長いまま朝起きると、ばさっと抜けてて、心の衝撃が大きいのでベリーショートにしてもらえますか?と私はお願いします。

何かに人生を左右されるんじゃなくて、自分でコントロールする。

要するに薬のせいで髪の毛抜けちゃいました、ではなくて、私が切った。

私が自分の意思で短く切ったということってとても大事なんです。

病気に対して被害者意識を持つのではなくて、自分が前向きに取り組んでいく。

自分の人生をコントロールするというのはとても大事なことで、たとえばさっきの禁煙の患者さんは自分が治る為の第一歩として禁煙をしたわけです。

その髪の毛が抜けちゃうとお伝えした方は、大体ベリーショートにして外来にいらっしゃいます。

そうすると自分の病気を乗り越える為の第一歩を自分で踏み出すことができる。

その一歩というのをベイビーステップというのですけれども、最初の赤ちゃんの第一歩ですね。

ベイビーステップというのは簡単に、というのは失礼かもしれないですが、自分でコントロールできることというのは自分で行動を起こすべきなんです。

自分が何か目標を立てた時に、じゃあ第一歩として、何かをやる。

夕方、あのご飯、こういうメニューで作ろうというのも、自分でコントロールしているわけですよね。

たまたま行って、何かが出てきてそれを食べるのではなくて、私がこれを作って、これを家族に食べさせる、それは自分が予定した行動を自分でちゃんと行動できているわけですね。

そういうコントロール、自分の人生をコントロールするという積み重ねで自信につながっていく。

皆さん、それぞれにいろんな夢があると思いますけれども、今日、ここに来ようと思ってくれたその決意というのはすばらしい。その覚悟というか。

初めていらっしゃる方もたくさんいらっしゃって、どういう話になるかも分からない。

いろいろな期待を持ってきていただいたと思うのですが、こちらに参加してくださった皆さん、お一人お一人に拍手を送りたいと思います。

人生っていろんな悲しみの積み重ねかもしれませんが、喜びも、こういう仲間たちと過ごす時間とか、とても貴重な宝物がたくさんありますので、けして悲しいことばかりじゃない、と。

いろんな悲しみを1つずつ受け容れて、自分で行動をコントロールしていくということが大事だと思います。素敵な人生にするためにはまず受け容れて行動しようということを最後にお伝えしたいと思います。