末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

食道がん

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食道がんの特徴

60/70歳台の男性がもっとも多い

食道がんは、初期症状がほとんど見られません。本人は気づきにくく、早期発見がむずかしいがんで、がん検診やそれ以外の病気の検査などで発見されることがほとんどです。進行が早く、有効な治療法が限られているので、難治がんともいわれています。
性別では、男女比約6:1と、男性のほうが女性の5?6倍かかりやすい傾向にあります。

食道がんの多くは、食道の内壁の粘膜に発生します。食道がんになられた患者さんの92%がこの扁平上皮がん(粘膜をつくる扁平上皮細胞にできるがん)です。欧米では腺がん(粘膜層の内部にある腺細胞から発生するがん)が半数以上をしめますが、日本でこのタイプは1.6%と非常に少ないのが特徴です。

90パーセントが胸部食道がん

発生する部位は3つにわけられます。「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」です。日本人に発生する食道がんの90パーセントは「胸部食道がん」です。
胸部食道は、心臓や大動脈、気管などと接しているため、手術には高い技術が要求されます。胸部食道とそのまわりのリンパ節、頸部のリンパ節の郭清(かくせい)をおこない、頸部食道と胃をつないで食道再建手術がおこなわれます。
郭清とは、がん細胞が転移している可能性があるリンパ節を予防的にとりのぞくことです。

食道がんの発生原因

食道がんになってしまった原因

食道がんになると、「なにが原因でがんになったのだろう?」と多くの方が自分の人生を深く見つめ直すきっかけになります。
しかし、なぜ食道がんになったのかは、実はだれにも分かりません。危険な因子がなくてもがんになりますし、どんなに危険な因子が多くあっても、がんにならない人もたくさんいるのも事実です。

危険因子をとりのぞいて再発リスクを減らす体内環境をつくる
ここで大切なのは、危険因子がもしあれば、生活からそれをとりのぞくことです。「生活を変える」「意識を変える」「自分を変える」。自分が変われば、食道がんが再発しにくい、あるいは転移しにくい体内環境をつくることにつながります。
ではここで、変えるための5つのポイントをご紹介しましょう。

1. 喫煙または飲酒の習慣をやめる
これらの習慣は、扁平上皮がんとの関連が強く、両方の習慣がある人は食道がんになるリスクが非常に高いとわれています。お酒を飲まずタバコも吸わない人を1とすると、タバコ1日40本、お酒1日4合を25年間つづけた人は、食道がんになるリスクは50倍という報告があります。

2. 熱い飲食物、辛いものをさける
食道の粘膜を刺激する熱い飲食物や辛いものは、食道がんのリクスを高めます。熱いマテ茶を飲む習慣がある南ブラジルやウルグアイでは、食道がんが多く見られます。
また、焦げにふくまれるニトロソアミン、ソーセージやベーコンなどにふくまれる亜硝酸塩(食品添加物/食品中の色素と反応して食品の色を安定化する発色剤)も発がん性物質です。

3. 食道がんに予防的にはたらく食べ物「野菜・フルーツ」をとる
野菜とフルーツには、カロテノイドやビタミン、食物繊維がふくまれ、とくにβカロテンやビタミンCが豊富です。野菜とフルーツを食べると、食道がんに予防的にはたらくという症例が研究によって明らかになっています。ビタミンCには、抗がん剤にも使用されるインターフェロンの生成を促進するはたらきもあるという報告があります。

4. その他
肥満、胃食道逆流症、ストレスも食道がんの危険因子です。

症状と検査の方法

初期症状

食道がんは、初期症状に乏しく、進行が早いのが特徴です。喫煙・飲酒の習慣がある方、また辛いものが好きな40歳以上の方は、毎年1回を目安に検査を受けることをおすすめしています。ごく初期の食道がんであれば、手術してがん細胞をすべてとりきる手術(根治手術)を行います。

もし、以下のような症状があれば、早めに病院で診てもらいましょう。
・のどの違和感
・ 食べ物が飲みこみにくい
・ 食べ物がしみるような感じがする
・ 食べ物がよくのどにつかえる
・ 体重が減った(3か月間に5?6キロ程度)
・ 声がかすれたり、声がれがある
・ 息切れする

食道がんの検査方法4つのステップ

ステップ1 最初の3つの検査
食道がんの疑いがある場合は、通常、次のいずれかの3つの検査を行います。
1. 食道造影検査(レントゲン検査)
バリウムを飲んで、X線で撮影して検査します。
2.食道内視鏡検査
口や鼻から内視鏡を挿入して、直接観察して検査します。
3. 血液検査(腫瘍マーカー)
腫瘍マーカーとは、がん関連物質の量的・質的な変化を検出して臨床指標として用いる物質です。食道がんにおいては、「CEA」「SCC」が有用な腫瘍マーカーです。

ステップ2 確定
食道がんかどうかを確定するために、組織の一部を採取して検査を行います。

ステップ3 病期と転移
食道がんの進行具合(病期またはステージともいう)を調べ、食道の外への転移がないかを調べます。検査方法は、超音波内視鏡検査、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィー、PET検査、脳のCT検査とMRI検査などです。

ステップ4 ステージの確定と治療方針の決定
ステージには、0期(初期)から4期まであります。ステージが確定されたら、手術ができるかどうかを判断します。すでに他の臓器に転移していると、「手術不適合」(医師がよく使う言葉です)と判断されることがあります。
その場合、医師は患者さんとよく話しあいながら、今後どの治療法がもっとも適切かを提案し決定していく、というのが一般的な流れです。

検査における患者さんへのアドバイス

疑問・不安を解消することで、患者と医師の“信頼関係”は築かれる

たくさん行われる検査に、不安を感じられる方も多いことでしょう。もし、不安があれば、遠慮せず、担当医師に次のように医師に質問してみましょう。

「いま、なにを調べるための検査なのですか?」
「その検査は、本当にやる必要はあるのですか?」
「自分はいまどのステージですか?」
「今後、どのような治療をしていくのがベストですか?」
「QOL(生活の質)をなるべく落とさない治療法はどれですか?」

ご自分から、積極的に質問していきましょう。このような会話を交わすことで、おたがいに“信頼関係”を築くことができます。「安心して治療に向きあえる」という土台づくりこそが、食道がんに負けないファーストステップです。

ステージごとにおこなう主な治療法について

ステージ0   内視鏡治療①
ステージ1と2 外科治療② 化学放射線療法③
ステージ3   化学放射線療法
ステージ4   薬物療法④、放射線治療、化学放射線療法、対症療法⑤

内視鏡治療

内視鏡によって映し出された体内の病変部を、モニター画面上で観察しながら治療を行います。挿入した内視鏡の先端から病巣部の根元にかけて、高周波電流を流してがんを切除するなどの方法です。

●メリット
・ 出血や痛みが少ない。
・ 身体への負担が比較的軽い。
・ 回復までの期間が短い。

外科治療(手術)

食道がんの手術は、とても難易度が高く、手術による死亡が数パーセント?10パーセントと、ある程度のリスクが伴います。手術をする目的には、「根治手術」と「緩和手術」の2種類あります。1つは、がん細胞をすべて取り切るための「根治手術」です。この場合、治る可能性は高くなりますが、転移・再発を必ず防げるというものではありません。あくまでも遠隔転移の可能性を下げるための治療法の1つと考えたほうがよいでしょう。
もう1つが「palliative operation」といって、日本語にすると「姑息手術」といわれるものです。これは、姑息な(卑怯な)手術法ではなく、医師によって「緩和手術」(症状を和らげるための手術)という言葉を使う人もいます。完治するのはむずかしいけれど、家族と一緒にすごせる時間を増やし、患者さんの痛みを少なくすることを目的にした手術です。

化学放射線治療

がん細胞に放射線を局所的に照射し、手術しなくてもすむ治療法です。腫瘍がまだ小さい場合に有効です。薬物治療との併用によって、より高い成果をあげてきている治療法です。ただし、転移がある場合は適応できません。

● メリット
・ 比較的短い時間で外来治療ができる。
・ 臓器を切り取らず、温存することができる。
・ 副作用が比較的少ない。
・ 手術のように身体にメスを入れないので、身体への負担が少ない。

● 副作用
頭髪が抜ける、吐きけ、めまい、倦怠感、食欲不振、白血球減少、皮膚の黒ずみなど。

薬物療法

転移があるとき、または転移がなくても再発する可能性が高いとき、再発してしまったときの治療法として抗がん剤治療を行います。また、手術ができるがんに対して薬物療法を行い、できるだけ小さくしてから手術にのぞむ場合もあります。
錠剤やカプセルなどの「のみ薬」と、「点滴や注射などで血管(静脈)に直接抗がん剤を注入する方法」があります。薬物療法には、以下の2つの種類があります。
1)化学療法:化学物質によってがんの増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療。
2)分子標的治療:分子レベルでがん細胞だけを標的にした薬を用いて行う治療。

● メリット
・ 転移があっても、がん細胞の増殖を抑えて攻撃できる。
・ 入院せず外来での治療もできる。
・ 臓器を切り取らず、温存することができる。

● 副作用
薬物療法は、正常な細胞も攻撃することになるので、薬物有害反応(いわゆる副作用)が生じることがあります。血液細胞が減ったり、口の中や胃腸の粘膜の再生が起こりにくくなったり、髪の毛や爪が伸びなくなったり、風邪をひきやすくなったり、貧血、吐き気、口内炎、脱毛など。女性ならば、将来的に妊娠・出産を希望するときは、まえもって担当医に相談しておくことが大切です。
しかし、近年では副作用に対する治療(支持療法ともいわれています)が、かなり進歩してきています。担当医に「副作用の症状を軽減させるための治療はありますか?」と相談してみましょう。

対症療法

病気に伴う症状を消す、あるいは緩和するための治療です。がんによる痛みや治療による副作用の症状が強い場合などは、それぞれの症状に応じた治療が行われます。がんを取り除くといった、根治を目指す治療ではありませんが、つらい症状に対応して痛みや不快な症状を取り除くことで、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を維持することを目指していきます。

食道がんについてのデータ

手術後ケア(どんな定期検診を行うか?)

1.3か月に1回 血液検査
半年に1回    頸部・腹部超音波検査、胸部CT検査
年に1回     内視鏡検査

■転移しやすい場所
手術後や放射線化学治療法のあとでも、再発してしまうことも少なくありません。血液やリンパ液の流れにがん細胞がのって、食道がんが発生した場所から離れた臓器へ転移(遠隔転移)します。転移しやすい場所は、肺、肝臓、骨、脳です。

■遠隔転移したときの治療法
遠隔転移した「進行食道がん」は、化学療法(抗がん剤)が治療の中心となります。

■ 5年生存率
1. 70.80パーセント
2. 50.60パーセント
3. 3.50パーセント
4. 10.30パーセント
5. 5.10パーセント