そんなことできるんですか?
メディ在宅クリニック 院長 髙橋 保正です。
ご紹介くださった皆さまには出来るだけ患者さまの自宅での様子を詳しくお伝えするようにしています。
そんな時、いただくお言葉で一番嬉しいのは、「えっ、そんなことできるんですか」です。
私が病院に勤務していて一番せつなかったのは、患者さまが「退院したい」とおっしゃった時に、重症患者さまを迅速に受け入れてくださる環境がほとんどなかったことです。
点滴もしている、モルヒネも使っている、鼻から胃管も入っている状況で退院というのも無理な話かもしれません。
でも「退院したいというお気持ちに応えたい」と、そう感じました。
通院したくても動けない患者さまもたくさんいます。
「救急車を呼ぶと大騒ぎになって周りで噂になってしまう」「どんなことがあっても入院はしないで家で過ごしたい」など、様々な理由でご自宅から緊急往診のご依頼をいただきます。
先日も、このようなご相談がございました。
総合病院に通院しながら抗がん剤治療を行なっている患者さまからです。
食事が摂れず、フラフラしながらようやく病院にたどりついて精密検査。
その結果、先生から突然次のような病状説明。
「薬が効かなくなりました。状態も悪いです。もう治療はありません。家で在宅の先生に診てもらって最期の時間を大切に過ごしてください」
ご本人さま、ご家族さまはパニック状態になりながらも、やっとの思いでご自宅に戻り、インターネットでお調べになって当院へご相談くださいました。
夕方のご相談でしたが、緊急でかけつけて病状を把握。
呼吸も弱ってきており、痛みも強く、険しい表情をされておりました。意識も混濁。
ただちにモルヒネの持続点滴を自動注入のポンプを使用して開始したところ、表情は穏やかになり、スヤスヤと優しいお顔でお休みになられました。
覚悟の気持ちが必要なこと、でも私たちは諦めずに苦痛を緩和する治療を継続して行くこと、一瞬一瞬を大切にして、悔いのないように時間を過ごして欲しいこと、どんなことがあっても24時間体制で私たちが責任を持ってご対応するので救急車を呼ばなくて良いことをご家族さまにはお伝えいたしました。
その日の深夜1時。
息子さま3人は点滴で楽になったお父さんを担いで運び出し、みんなでドライブに出かけました。薄れゆく意識の中で夜景を見ながら穏やかに微笑まれたその顔を息子さまたちは一生忘れないでしょう。
突然ご自宅で動けなくなることは、がんの患者さまでは珍しいことではありません。
「昨日まで元気だったのに」と、病院の主治医の先生ですら、びっくりされることもあります。
それだけがんの患者さまには、ある日突然なことが起こりえます。
病気のスピードに医師、看護師、介護関係者が負けてはいけません。
「がん細胞がどんなスピードで襲ってこようとも、必ず患者さまを守ってみせる」という覚悟が必要なのです。
私たちはいつも覚悟を持って任務にあたっています。
「今日退院したい」という患者さまや、ご自宅で動けなくなった患者さまに、サイレンは鳴らせなくても全力で運転して向かいます。
患者さまに、ご家族さまに、病院の先生方に安心して欲しいから。任せて良かったと感じて欲しいから。
「えー、そんなことできるの」って、驚いて欲しいから。
だから今日も全速力で患者さまのもとに向かいます。
季節はもうすぐ師走。みんな忙しくなりますね。
今年はクリスマスパーティーは出来ないけど、みんなにとって良い年末になるように。
みんなで患者さまのしあわせのためにできることを考えて実行していきましょうね。
病院医師・看護師・連携室職員のみなさまからよくある質問にお答えします。
がんで通院しています。
今日は、お家でぐったりしています。病院には行けません。なんとかなりませんか。
なんとかなります。
私たちが今からお家に向かいます。
先生には簡単なお手紙を書いていただき、連携室の方にはこれまでの採血結果やCT検査の結果などをひとまずFaxでいただきながら、患者さまのもとに向かいます。
ご自宅では、詳細なこれまでの経過や主治医の先生からどのようなご説明を受けているのかをお聞きしながら、全身の診察、エコー検査での状況把握を行ないます。
必要であれば、その場で中心静脈カテーテルを留置して点滴を開始します。
場合によっては、モルヒネの持続注射をただちに開始します。
少しでも早く患者さまが楽になれるように、できることをしっかりと迅速に行なっていきます。
「これならお家で過ごせます」
そんな安心感をご家族さまにプレゼントして、一旦ご自宅を離れます。
「明日も必ず来ますからね。困った時には、いつでも24時間呼んでいいですよ」
と約束しながら。
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人間をポイ捨て!?タクシー運転手が犯した罪とは?
次のような事件がありました。
酒に酔ってタクシー内で寝込んでしまった男性の乗客を、運転手が道路の中央付近に放置し、その後に走ってきた後続車にひかれて男性が死亡しました。
事件を知った運転手の男は、「市内の繁華街で乗せて、自分が降ろした乗客が死亡したのではないか」と警察に出頭。
容疑が固まったため、同署は男を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕しました。
タクシーの運転手は寝ていた乗客を起こそうとしたのか?
会社に連絡をしたり、警察に届けるという選択は考えなかったのか?
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そもそも、なぜ乗客を路上に置き去りにしたのか?
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詳しくはこちら(出典:マイ法務)
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