末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

乳がんは手術をすれば治る?

乳がんは手術をすれば治るのか?ということなのですが、乳がんとはとても難しくて、乳がんが発症して、わきの下のリンパ腺に流れていく細胞もいるけれども、いきなり全身に流れているものもいるという事を覚えていなければならないのです。

乳管という、ミルクの通り道ですね、こういう中にとどまっているがんを非浸潤がんといいます。水道管に例えると失礼かもしれませんが、そのミルクの通り道の水道のがんが破裂してしまうと、浸潤がんという名前に変わって、血管とかリンパ管に、この破れた水道管の水、がん細胞が入っていってしまう。浸潤がんだと、一瞬で全身に流れていってしまう可能性というものがあります。

ですので、ではこの部分だけ取ったらおしまいかというと、そうではないというのが、イメージとして分かっていただけたらいいなと思います。

嫌な言葉ですが、全身の病気と考えないと、間違った治療になってしまいます。画像診療で転移なしと判断されても、細かい転移が潜んでいる可能性がありますので、手術だけではなくて、さまざまな治療方法を組み合わせてやっていかなければいけないのです。

これは別に怖がらせているわけではなくて、いろんな方法を組み合わせなければいけないんだよ、手術したから終了じゃなくて、お薬の治療も一緒にやろうね、ということです。

またよく聞かれるのが、手術まで、大きな病院まで二ヶ月とか三ヶ月とか必要ですといわれることもあると思うのですが、では時間があるから進行しますか?というと、二ヶ月三ヶ月で進行することは無いと、私たち乳腺外科医は考えています。

ですから、手術まで三ヶ月ありますという場合でも動じる必要は無いです。乳がんが1センチになるまでに約8~9年かかるといわれていますので、1センチのものが検診で見つかったとすると、それが最初に発生してきたのは約8年前ではないかということは、今までの歴史の中から推測されています。

自然療法というのも、いろいろな食事とか自然なものを取りましょうという食生活、代替療法というものもありますけれども、それだけに行くのではなくて、上手に組み合わせていきましょうということが大切です。

また、乳製品とか大豆を食べてはいけないという話があって、一時期、牛乳を一滴も飲んではいけませんよ、という本も出たりしまして、皆いっせいに止めようと言っていましたが、基本的にそれを証明するのはとても難しいです。生まれて今まで一滴も飲んだことの無いという人はいませんので、正確な研究というのはできません。ですから、極端にあれを止めよう、これをやめようというのではなく、基本的に乳がんで食べてはいけない食事というものは無いので、極端な食事の制限は止めましょう。

セカンドオピニオンですが、主治医の先生にセカンドオピニオンに行きたいのですが、というのはとても勇気が必要だと思います。私は常日頃、セカンドオピニオンをしたかったらドンドン言ってくださいといっているのですが、それでも患者さんはとても申し訳なさそうに、あの今日はちょっと言いにくいことがあるんですけれど、と。

病気が見つかって、手術をしましょうとお話になって、ご本人と私で頑張ろうね、という話をしていても、次の機会にご夫婦でいらっしゃったときに、実はちょっと言いにくいのですが・・・。おうちでいろいろ相談をした結果、日本の中で有名な病院というのがいくつかあるのですが、そちらのほうにセカンドオピニオンに行きたい、という風に。私はそれでいいと思います。やはりご本人だけで決めることではないですし、ご家族と相談して、よりよい方法、後で皆が、あ、よかったねと。

それでお話を聞いた結果、戻ってきていただけると、更に私も頑張っていてよかったなと思いますが。

セカンドオピニオンというのは基本的に意見を聞いてくるだけなので、私が顕微鏡の検査結果とか、超音波の検査結果とかマンモグラフィとかCTとか全部をそろえて、じゃあ、セカンドオピニオン、行ってきてね、といって大きな病院に行っていただく。向こうでは教授とかがそれをチェックして、じゃあ、分かりました。これは高橋先生が仰る通りで、その治療方法でいいですよ、と言ってくれるのがセカンドオピニオンです。紹介ではないです。

セカンドオピニオンは、意見を聞いて、その資料は向こうに残らずに、そのまま丸々また持って帰ってきて、「では向こうで治療を受けます。」とか、「こっちで治療を受けます。」とかというものです。

紹介というのは、最初から「向こうに行きます。」というもので、そういう違いがあります。これはとても患者さんたちにわかりづらいと思います。

セカンドオピニオンというのは、ご意見を聞いてくるということで、大体30分2万円とか、お金がかかります。紹介だと全て保険適応ですので、そのままお手紙を持っていきましょうということになります。

セカンドオピニオンはぜひ聞いていただいて、全て納得した上で治療を受けるということが大事です。