末期がんの緩和ケア ご家族のための「在宅緩和ケア」「自宅での医療」の知識【神奈川県川崎市幸区の在宅緩和ケアクリニック】

家庭の料理をおいしく流動食や刻み食にする工夫

家庭の料理と本人用の食事を別々に作ることが負担になる場合があります。その場合は、

家庭のメニューを流用して流動食や刻み食を作ると楽になります。

それにはいくつかコツがあり、その中の1つが「薄味に仕上げる」ことです。

塩分がのどを刺激して食べづらくなることや、むくみの予防は、料理を薄味にすることで対応しやすくなります。

この場合の薄味は、だしや薬味(ねぎやにんにく、しょうが、わざび、しそなど)、酢やレモン果汁などで塩の使用量を減らして味を調えるのがコツです。

治療の副作用で味覚の変化が起きている場合は、その変化の内容に応じて味つけに工夫をしましょう(「味覚が変化してしまった時の工夫」を参照してください)。

薄味に作った料理では家族が物足りない場合、家族用には後からしょうゆなどをかけて味を濃くしても良いのですが、薄味には4~7日程度で慣れるものなので、これを機に家族も減塩してみるのもおすすめです。

流動食や刻み食を作る前に、出来上がった料理をほかの家族と同じように盛り付けて、出来上がりを目で見てもらうようにします。こうすることで、食欲がおちている闘病中でも、まず食事の楽しみを持ってもらえます。

もし、「そんな量は食べられない」と気に病む場合は、「家族の分量だから」とし、「食べられるだけ用意するね」と声をかけましょう。

ともかく、「今日はどのようなメニューを食べるのか」ということを、「目で見て知る」ことが大事なので、すべてのメニューを見せるようにしましょう。そのなかで「これは食べたくない」というものがあれば除外します。

見せたあとは、消化しやすいように細かく切った「刻み食」や、ミキサーにかけた「流動食」を作ります。

ここでは便宜上ミキサーと呼んでいますが、実際に使うのは、一般的なミキサーではありません。一般的なミキサーは、洗浄が面倒であったり、量が少ないと回転しにくいものなのです。そこで、

直接コップやグラスに料理を入れて、攪拌(かくはん)機を使ってドロドロにできる、「ブレンダー」と呼ばれる器具や、ミキサーであっても小型のものを使用します。

刻み食はとろみがないと食べづらいので、汁気をもたせてとろみをつけます。常温で溶けてとろみがつくベビー用の片栗粉などが便利です。焼き魚のように汁気が少ないぱさぱさした料理のときは、小さくほぐしてお茶をしっかりと飲むようにすすめましょう。それらを小皿に少量盛り付けます。

流動食は、全部のメニューを一度に全部ミキサーに入れてしまうと、色が悪くなる上に、ニオイも交じってしまうため、食べたくなくなります。そこで、1つ1つの料理ごとにミキサーにかけるようにし、仕上げに塩やしょうゆ、ポン酢などで軽く味をつけなおしましょう。

作り立ての料理は、刻み食や流動食にしている間に自然に冷めて、食べるのにちょうどよいひと肌程度の温度になります。

もともとが流動食状の料理である、ポタージュなどを献立に取り入れると、1品楽になります。また、市販のレトルト製品は、使用している野菜の種類が多いのでおすすめです。

流動食はむせやすいので、ゆっくりと口に含んで、必ず「ごっくん」と飲み下すことが重要です。しょっちゅうむせたりする場合は、のどが動いて飲み下しているのを確認するなど、食べる側もすすめる側も慎重に食べましょう。